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2006年11月 1日 (水)

核保有議論、あの朝日新聞のあの「風考計」で

なんと、あの朝日新聞のあの「風考計」で核保有論議が展開されている。まぁエマニュエル・トッド氏が日本の核保有に肯定的とも言える(まぁフランスの状況をふまえてとかそのものずばり「帝国以後―アメリカ・システムの崩壊」といかそういう背景があるのだから、そう単純に現在の日本を取り巻く関係の中で持てるとかそういうのではないのだろうが、なにぶん小ブログは雑なブログで小生も無知なのでよく分かりません)ことをいっているのは、今に始まった話じゃないので驚きはしなかったが、なにせ載っている媒体が媒体なのでびっくりした。

若宮啓文・朝日新聞論説主幹はこれを「刺激的な議論になったが、頭の体操だと思ってお読みいただきたい」とされているが、思い返せば竹島に関するコラムの方が刺激的だった。若宮御大が、「島を放棄と言えば「国賊」批判が目に浮かぶ」ということを記されていたとき、小生のような表現力のたりないものは国賊なんて表現頭に浮かばず「○○○の××で□□を地でいく▲▲のようなお方」と記した。そして、朝日新聞というのはとんでもない考え方の新聞なんだろうという風なかたちで信用できる新聞なのか、みたいなことを記した。

まさかそこで核保有論議とは、「ふぅー、びっくりした」。
例えば・・・毎日新聞で絶賛連載中「石田衣良の白黒つけます!!」で、アンケート募集し、答えさせておきながら、「応募しなかった多数のサイレントマジョリティを考慮にいれて決定」という、応募だったのかという驚きとともに、「多数」と「サイレントマジョリティ」という言葉はこう並列させて使うのかと、日本小説界にその名燦然と輝く石田衣良御大の文章に初めて触れ知った。また同時に、「石田衣良の白黒つけます!!」と「!」を二つもタイトルにつけた毎日新聞と作家・石田衣良先生に「新聞の平均閲読時間数の減少や、毎日新聞の部数という現状からして、残念ながら毎日新聞の読者アンケートは、それを読み、目にとめ、応募してもらわなければ成立しえないもので、参加しないものこそサイレントマジョリティなのだから、石田衣良が毎日新聞と白黒つけましょう」という並々ならぬ決意あったのだろうか?など考えさせられたとき(驚いた部分はこれだけではないが)よりも・・・びっくりした。

それにしてもよくもまぁ、世界の知性と議論して、それを掲載して、読む側「頭の体操」って。日本語って難しいなぁ、そういうの頭の体操って言うのだろうか?

読んでいて感じるのは、「核廃絶は国民共通の願い」とか「アイデンティティ」とか「唯一の被爆国」とか、若宮御大ってまさしくナショナリズムの持ち主なんじゃないのか、と。そして、第二次大戦がとっくの昔に終わったという認識の差違は個々人によって凄まじい、そして冷戦なんてものはすでに終わったのだという考え方と終わってなどいなかったという考え方では自ずと結論が異なってくるのだろうなぁ、というもの。

そしてなによりも、「唯一の被爆国だから」という考え方は世界で通用しない良い例だと感じられた。

(以下、朝日新聞の記事より引用)
核兵器 「帝国以後」のエマニュエル・トッド氏と対談
2006年10月30日

今月はパリで行った対談を「風考計」の特別編でご紹介したい。相手は独特の視点で世界を読み解き、著書「帝国以後」などで広く知られるエマニュエル・トッド氏。鋭く米国や中国を批判する彼は、何と日本に「核武装」を勧めるのだった。刺激的な議論になったが、頭の体操だと思ってお読みいただきたい。

●トッド「偏在が恐怖、日本も保有を」 若宮「廃絶こそ国民共通の願い」

若宮 いま、北朝鮮の核が深刻な問題です。

トッド 北朝鮮の無軌道さは米国の攻撃的な政策の結果でしょう。一方、中国は北朝鮮をコントロールしうる立場にいる。つまり北朝鮮の異常な体制は、米国と中国の振る舞いあってこそです。

若宮 トッドさんは識字率の向上や出生率の低下から国民意識の変化を測り、ソ連の崩壊をいち早く予測しました。北朝鮮はどうでしょう。

トッド 正確な知識がないのでお答えできない。ただ、核兵器が実戦配備されるまでに崩壊するのでは……。

若宮 でも不気味です。

トッド 核兵器は偏在こそが怖い。広島、長崎の悲劇は米国だけが核を持っていたからで、米ソ冷戦期には使われなかった。インドとパキスタンは双方が核を持った時に和平のテーブルについた。中東が不安定なのはイスラエルだけに核があるからで、東アジアも中国だけでは安定しない。日本も持てばいい。

若宮 日本が、ですか。

トッド イランも日本も脅威に見舞われている地域の大国であり、核武装していない点でも同じだ。一定の条件の下で日本やイランが核を持てば世界はより安定する。

若宮 極めて刺激的な意見ですね。広島の原爆ドームを世界遺産にしたのは核廃絶への願いからです。核の拒絶は国民的なアイデンティティーで、日本に核武装の選択肢はありません。

トッド 私も日本ではまず広島を訪れた。国民感情はわかるが、世界の現実も直視すべきです。北朝鮮より大きな構造的難題は米国と中国という二つの不安定な巨大システム。著書「帝国以後」でも説明したが、米国は巨額の財政赤字を抱えて衰退しつつあるため、軍事力ですぐ戦争に訴えがちだ。それが日本の唯一の同盟国なのです。

若宮 確かにイラク戦争は米国の問題を露呈しました。

トッド 一方の中国は賃金の頭打ちや種々の社会的格差といった緊張を抱え、「反日」ナショナリズムで国民の不満を外に向ける。そんな国が日本の貿易パートナーなのですよ。

若宮 だから核を持てとは短絡的でしょう。

トッド 核兵器は安全のための避難所。核を持てば軍事同盟から解放され、戦争に巻き込まれる恐れはなくなる。ドゴール主義的な考えです。

若宮 でも、核を持てば日米同盟が壊れるだけでなく、中国も警戒を強めてアジアは不安になります。

トッド 日本やドイツの家族構造やイデオロギーは平等原則になく、農民や上流階級に顕著なのは、長男による男系相続が基本ということ。兄弟間と同様に社会的な序列意識も根強い。フランスやロシア、中国、アラブ世界などとは違う。第2次大戦で日独は世界の長男になろうとして失敗し、戦後の日本は米国の弟で満足している。中国やフランスのように同列の兄弟になることにおびえがある。広島によって刻まれた国民的アイデンティティーは、平等な世界の自由さに対するおびえを隠す道具になっている。

若宮 確かに日本は負けた相手の米国に従順でした。一方、米国に救われたフランスには米国への対抗心が強く、イラク戦争でも反対の急先鋒(きゅうせんぽう)でした。「恩人」によく逆らえますね。

トッド ただの反逆ではない。フランスとアングロサクソンは中世以来、競合関係にありますから。フランスが核を持つ最大の理由は、何度も侵略されてきたこと。地政学的に危うい立場を一気に解決するのが核だった。

●トッド「過去にとらわれすぎるな」 若宮「日本の自制でアジア均衡」

若宮 パリの街にはドゴールやチャーチルの像がそびえてますが、日本では東条英機らの靖国神社合祀(ごうし)で周辺国に激しくたたかれる。日本が戦争のトラウマを捨てたら、アジアは非常に警戒する。我々は核兵器をつくる経済力も技術もあるけれど、自制によって均衡が保たれてきた。

トッド 第2次大戦の記憶と共に何千年も生きてはいけない。欧州でもユダヤ人虐殺の贖罪(しょくざい)意識が大きすぎるため、パレスチナ民族の窮状を放置しがちで、中東でイニシアチブをとりにくい。日本も戦争への贖罪意識が強く、技術・経済的にもリーダー国なのに世界に責任を果たせないでいる。過去を引き合いに出しての「道徳的立場」は、真に道徳的とはいいがたい。

若宮 「非核」を売りにする戦略思考の欠如こそが問題なのです。日本で「過去にとらわれるな」と言う人たちはいまだ過去を正当化しがち。日本の核武装論者に日米同盟の堅持論者が多いのもトッドさんとは違う点です。

トッド 小泉政権で印象深かったのは「気晴らし・面白半分のナショナリズム」。靖国参拝や、どう見ても二次的な問題である島へのこだわりです。実は米国に完全に服従していることを隠す「にせナショナリズム」ですよ。

若宮 面白い見方ですね。

トッド 日本はまず、世界とどんな関係を築いていくのか考えないと。なるほど日本が現在のイデオロギーの下で核兵器を持つのは時期尚早でしょう。中国や米国との間で大きな問題が起きてくる。だが、日本が紛争に巻き込まれないため、また米国の攻撃性から逃れるために核を持つのなら、中国の対応はいささか異なってくる。

若宮 唯一の被爆国、しかもNPT(核不拡散条約)の優等生が核を持つと言い出せば、歯止めがなくなる。

トッド 核を保有する大国が地域に二つもあれば、地域のすべての国に「核戦争は馬鹿らしい」と思わせられる。

若宮 EU(欧州連合)のような枠組みがないアジアや中東ではどうでしょう。さらに拡散し、ハプニングや流出による核使用の危険性が増えます。国際テロ組織に渡ったら均衡どころではない。

トッド 核拡散が本当に怖いなら、まず米国を落ち着かせないと。日本など世界の多くの人々は米国を「好戦的な国」と考えたくない。フランス政府も昨年はイランの核疑惑を深刻に見て、米国に従うそぶりを見せた。でも米国と申し合わせたイスラエルのレバノン侵攻でまた一変しました。米国は欧州の同盟国をイランとの敵対に引き込もうとしている。欧州と同様に石油を中東に依存する日本も大変ですが、国益に反してまで米国についていきますか。

若宮 日本のイランへの石油依存度は相当だし、歴史的な関係も深い。イラクの始末もついていないのにイランと戦争を始めたらどうなるか。イラクのときのように戦争支持とはいかないでしょう。

トッド きょう一番のニュースだ(笑い)。北朝鮮と違い、イスラム革命を抜け出たイランは日本と並んで古い非西洋文明を代表する国。民主主義とは言えないが、討論の伝統もある。選挙はずっと実施されており、多元主義も根づいている。あの大統領の狂信的なイメージは本質的な問題ではない。

若宮 イラン・イラク戦争のとき日本は双方と対話を保ち、パイプ役で努力した。その主役は安倍首相の父、安倍晋太郎外相でした。

トッド 私は中道左派で、満足に兵役も務めなかった反軍主義者。核の狂信的愛好者ではない。でも本当の話、核保有問題は緊急を要する。

若宮 核均衡が成り立つのは、核を使ったらおしまいだから。人類史上で原爆投下の例は日本にしかなく、その悲惨さを伝える責務がある。仮に核を勧められても持たないという「不思議な国」が一つくらいあってもいい。

トッド その考え方は興味深いが、核攻撃を受けた国が核を保有すれば、核についての本格論議が始まる。大きな転機となります。

●トッド「北方領土問題、高い視点から」

若宮 ところでトッドさんはロシアを重視し、日ロ関係を良くすれば米国や中国への牽制(けんせい)になると書いてます。

トッド 私はずっとそう言ってきた。ロシアは日本の戦略的重要性を完全に理解している。国際政治において強国は常に均衡を求める。

若宮 でも、日ソ国交回復から50年たっても北方領土問題が片づかず、戦略的な関係を築けません。

トッド ロシアは1905年の敗北を忘れず、日本は第2次大戦末期のソ連参戦を許していない。でも仏独は互いに殺し合ってきたのに、現在の関係は素晴らしい。独ロや日米の関係もそうです。日ロもそうなれるはずだ。

若宮 日本は北方四島を全部還せと言い、ロシアは二つならばと譲らない。

トッド では、三つで手を打ったらどうか(笑い)。

若宮 そう簡単にはいきませんが、互いに発想転換も必要ですね。ロシアは中国との国境紛争を「五分五分」の妥協で片づけました。

トッド 解決のカギは仲良くしたいという意思があるかどうかです。北仏ノルマンディー沖にも英国がフランスから分捕った島があるが、問題になっていない。地中海にあるフランスのコルシカ島は元々イタリアだったが、誰も返せとは言わない。

若宮 日本と韓国の間にはもっと小さな島があり……。

トッド それこそ「偽りのナショナリズム」。国益の本質とは大して関係ないでしょう。この種の紛争解決にはお互いがより高い視点に立つこと。つまり共同のプロジェクトを立ち上げる。北方領土でも何かやればいい。

若宮 トッドさんが平和主義者だということが分かりました(笑い)。

◆「非核」こそ武器に

私のパリ訪問は、日ソ国交回復50周年の催しや日米シンポジウムに出席のため、モスクワとワシントンを訪れる道中だった。トッド氏とは3年近く前に東京で会って以来だが、緊張を強いられた2時間。「皮肉屋のフランス人」を自称するだけに、あえて挑発してくれたのかも知れない。

核には格別に反感が強い日本だが、かつてソ連や中国に対抗しようと、首相が核に意欲をのぞかせた時代があった。岸信介、池田勇人、そして最も米国を驚かせたのは佐藤栄作氏だった。

中国が核実験をした64年、首相となった佐藤氏はライシャワー駐日大使に会うと核武装への意欲を語り、大統領と話し合いたいと伝えた。大使は本国への報告で「容易ならない危険性」を指摘し、指導・教育の必要性があるとコメントをつけた(中島信吾氏の「戦後日本の防衛政策」から)。何よりも核の拡散を恐れたのだ。

米国が日本に「核の傘」の提供を確約し、日米安保体制を固めていったのはそんな経緯からだ。やがて核不拡散条約(NPT)が生まれ、日本は米国の強い後押しで76年に批准。95年には条約の無期限延長にも応じた。唯一の被爆国として「非核」の道を鮮明にしたのだった。

ところがインド、パキスタンだけでなく、北朝鮮までが核実験。有力政治家が相次いで核保有の検討論を口にしたのもその動揺からだ。根強いナショナリズムも底流にうかがえる。

それでも変わらないのは、米国政府がそれを認めないということ。日本が核を持ちたいなら、米国と事を構える覚悟がいるのだ。米国と距離を置くゆえに核の勧めを説くトッド氏は、実はその矛盾を突いている。

一方で、「非核」の日本が問われているのは、果たして政府が胸を張ってそれを世界に訴え、国際政治のテコに使っているか、ということだ。

日本がイラク戦争を支持したとき、「もっと毅然(きぜん)としたら」と政府の幹部にただしたら、「フランスみたいに核を持ってないからねえ」と答えたのを思い出す。

私がトッド氏に反論しながら、どこか耳が痛い気がしたのは、そんな記憶のせいに違いない。

◆エマニュエル・トッド

フランスの人類・歴史学者。パリ政治学院卒。英ケンブリッジ大学で歴史学の博士号。「最後の陥落」(76年)では出生率の推移などからソ連崩壊を早々と予測。「第三惑星」(83年)や「移民の運命」(94年)に続き、米国の病理と一極世界の限界を示す「帝国以後」(02年)など話題作多数。人口動態や識字率などを根拠に「常識破り」の仮説と世界観で問題提起を続けている。55歳。作家ポール・ニザンの孫でもある。 (引用終わり)

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font size=3 北朝鮮の核開発を契機にして海外では「日本も核開発に向かうのではないか」、すなわち、日本核武装の可能性が公に語られている。例えば、ブッシュ政権で大統領補佐官を務めたデービッド・フラム氏(Mutually Assured Disruption, by David Frum, New York Times, October 10, 2006)やフランスの人類学・歴史学者のエマニュエル・トッド氏(朝日新聞の若宮啓文論説主幹との対談:朝日新..... [続きを読む]

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